吉田茂の「回想十年」第一巻を読みました。
奥付を見ると昭和三十二年新潮社から出版されていて、定価は参百参拾円です。この本も後に出た文庫版もすでに絶版になっていますので、けっこう貴重な本かもしれません。(図書館で借りました)
麻生太郎のおじいちゃん、なかなか文章がうまいです。
---
由来、私は自叙伝や回顧録を書かぬかと勧められると、いつも思うことは、これらの多くは、結局、自画自賛か、自家広告か然らずんば、弁疏の類に過ぎない。第一そんなものが世を益したり、後世史家の資料として価値があるとも思えぬ、だから自叙伝、回顧録の類は書きたくないということである。またそうも答えてきた。
---
じゃあ、なんで書いたんだ。と思わずつっこみをいれたくなる、序文の冒頭から面白いですし、他にも日本外交の失敗について述べたこんなところも興味深かったです。
---
国際信用に関連して重要なことは、正義に則って外交を行うということである。外交が自国の利益を直接対象とするのは、言うまでもないが、同じく自国の利益といっても、目先の利益と長い先々までを見通した利益とがある。
P31 国際信用と国際正義より
---
やはり、興味があるのは、あのころの日本人がなぜ、負けると判っていた戦争を回避できなかったです。ハルノートをつきつけられたときの事について。
---
東郷君はもとよりのこと、当時私が接した重臣層をはじめ、政治上層部の誰もがこの戦争には賛成していなかった。国民の大多数もまさか戦争になろうとは思ってもなかったであろう。しかるにこれらの重臣層の人々は内心戦争に反対しながら、その気持ちをどうもはっきり主張したり、発言したりしなかった。こんな時にこそ、国民性が顕われるもので、平素とかく大人ぶったり、知ったかぶりするくせに、いうべき時にいうべきことを言わず、しかして事後において弁解がましきことを言い、不賛成であったとか、自分の意見は別にあったなど言うものが多い。P52
----
ふーむ。どうも日本人のこういう傾向、今だに、ありますねえ。
東郷君とは当時の外務大臣、東郷茂徳。
吉田茂「回想十年」
0 TrackBacks
Listed below are links to blogs that reference this entry: 吉田茂「回想十年」.
TrackBack URL for this entry: http://www.itc-japan.com/cgi-bin/mt-tb.cgi/617
Leave a comment